中越地震で被災した中村良子さんと盲導犬ペギーとの偶然の出逢い

中村良子さんとペギー

2006年7月のこと、新潟県中越地震で被災した視覚障害者の中村良子さんと共にそれを乗り越えた盲導犬クララとの別れのドキュメンタリーがフジテレビのニュースで放映されたのを溢れてくる涙をぬぐいながら、鼻をぐしゅぐしゅしながら見ていました。中村良子さんの優しい心が画面から溢れ出ていて、別れたくない二者の思いと、盲導犬としては引退しなければならない定めとが交錯しながらも、強く明るく前向きに生きる中村良子さんの姿勢に感動で涙が溢れたのです。それから間もなくのこと、神戸出身のCG作家の要請で神戸の子供達のためのイヴェントに協力するため、東京駅へと中央線に乗ったところ、何と目の前にその中村良子さんと盲導犬がいるではありませんか。目を凝らしてじっと見ていましたが、誰も付き添う方がいらっしゃらない様子。混雑した東京駅に着くと連休の初日で大混雑していました。中村良子さんを先導していた盲導犬が戸惑っている様に見えた私は、「新潟にお帰りですか。」と思わず声を掛けたのです。「はーそうです。」「実はフジテレビのニュースを見ていたものですから、新潟新幹線の改札口までお送りしましょうか。」「それはありがとうございます。助かります。」会話は続き、新潟新幹線の改札口までお送りしたところ、中村良子さんは一冊の本を私に差し出し、お礼にとプレゼントをしてくださったのです。それがまさに私がニュースで見た盲導犬クララが表紙になった「震災にあった盲導犬クララ」という本でした。初代盲導犬ハイジと日本で初めて地震のための避難所に入った2代目クララと中村良子さんとの心あたたまる交流を綴った感動の実話です。後で伺ったのですが、中央線で出逢った盲導犬はクララではなく3代目ペギーで、その日が良子さんとの新たなパートナーとしてのスタートの日だったそうです。指導員は恐らく遠くから見守っていたのでしょう。そしてその日は私と中村良子さんにとっても交流がスタートした日だったのです。その後、私もお礼にプロデュースしたKennyのデビューCD「アナタニアイアタイ」をプレゼントで贈らせていただきました。良子さんはお米やご自身で作られた農作物やお酒を度々送ってくださったり、KennyのCDを買いたいとお金を送ってきてくださったり、電話でお話をしたりしてお付き合いを続けてきました。2月18日にリリースしたKenny 2nd Single「涙〜世界のどかで瞬間」をとても気に入ってくださり、沢山の方々に勧めて応援してくださった良子さんのためにいつか生のライブを届けに行きたいとお話しをしたところ大変喜んでくださいました。それから良子さんから事務所に突然お電話があり、小国町(現長岡市)の役場に話してくださったそうで、夏祭りや色んな提案が出ていることを知らせくださいました。ありがたいお話です。私と中村良子さんの出逢いからまだ、行ったこともない町の子供達にも「涙〜世界のどかで瞬間」のテーマを音楽で届けられることが実現できるかもしれないと思っただけで心が躍りました。そしてまた、嬉しい電話。明後日東京に用事があっていくのでその翌日事務所に中村良子さんとぺギーが来て下さるというのです。そして、4月13日中村良子さんとぺギーと東京駅以来の再会が実現したのです。一緒についてきてくださった良子さんのご近所の田村さんKennyも加わって、一緒にお昼を食べながら楽しい再会の時を過ごしました。良子さんとその良子さんを支えてくれた盲導犬たちのためにも「涙〜世界のどこかで瞬間」のコンサートを新潟で実現させたいと願いながら後姿をずっと見送りました。ペギーの後姿がなんとも言えず愛らしく思わず可愛いと思った瞬間、ペギーが振り返ってくれて胸を熱くしました。ありがとう良子さん、ペギー。
                                      音楽プロデューサー 近藤由紀子