還暦の日に受け取った大きな贈りもの

yukigeshiki2009-01-20

2009年1月8日、無事に還暦を迎えることが出来ました。人生60年、振り返れば沢山の人との出逢いと別れがあり、長い自分史があります。そもそも還暦は十干十二支の組み合わせの干支が一巡して赤ちゃんの時に戻ったことを祝うものです。それゆえ赤のものを身につけたりします。赤は魔よけの意味も持ちます。60歳まで無事に生かされたこと、そしてもう一度生まれ変われるチャンスをもらえたことを空に向かって心から感謝をしたい気持ちです。まさにそんな目出度い日にプロデュース・作詞を手掛けた「涙〜世界のどこかで瞬間」のドキュメントPVが出来上がってきたのです。家族や友人からのプレゼントは言うまでもなく有難く、嬉しいものでしたが、そのPVがまさに私の還暦の日に完成したことは、自分の人生に誇りをもてる大きなプレゼントとなりました。その8日に日が変わった午前早い時間(遅い時間と言ったほうがいいのか?)は写真家・宮本敬文さん、レコード会社の方、代理店の方と酒盃を交わし西麻布の料理のおいしいお店で舌鼓を打ち本当に幸せな一夜でした。
前回のエッセイと重なる部分もありますが、「涙〜世界のどこかで瞬間(いま)」の音楽の誕生からその大きな贈りものとなったストーリーを還暦の祝いの記憶として残しておくためにも書き留めたいと思います。
映像ジャーナリスト・長井健司さんが2007年9月27日、ミャンマーで取材中に撃たれたニュース映像を目の当たりにしたその時、私の身体の中を駆け抜けていく何か熱いものを感じました。山路敦司が作曲した曲に詞を付けようとしていた私は、その瞬間、詞が溢れ出てきてわずか1時間足らずで歌詞を書き上げました。それが「涙〜世界のどこかで瞬間(いま)」です。長井健司さんがいのちを懸けて映像で伝えようとしたものと、愛するわが子のいのちをどんな戦いの中でも守り抜こうとする世界中の母親の強い意志が私に詞を書かせたのかも知れません。こうして生まれた歌だからこそ、そのPVはどうしてもドキュメンタリー映像にしたいと願っていました。そんなある日偶然にも、某広告代理店のCMプロデュサーと待ち合わせをしていた受付に置かれていた一冊の写真集が目に留まりました。真っ赤な十字架のようにも見えるリボンをまとったような宮本敬文・撮影「GIFT」という写真集でした。手にとってみると“この本はカンボジアの子供たちから贈られた命のフォトメッセージです。”と書かれていました。すぐにその写真集を手に取って、中の子供達をじっと見ているうちに「涙〜世界のどこかで瞬間」のドキュメントPVを撮ってもらうのはこの写真家しかいないと思い、待ち合わせをしていたプロデュサーにその話をしたところ、音楽を聴いてすぐに繋いでくださったのです。そして宮本敬文さんとお目にかかることになりました。願いどおり、宮本敬文さんは音楽を聴いて、歌詞のテーマの中心となった子供達を、しかも「GIFT」と縁のあったカンボジアの子供達を撮影することを喜んで引き受けてくださいました。予算の少ないこのPV撮影は実現できるかどうか不安だったのですが、宮本敬文さんをはじめ国内外の多くの人々のご協力とご好意で実現することとなり、乾季のカンボジアの青空の下、孤児院や学校や村を訪ね、貧しくとも命輝かせて生きている多くの子供達との出逢いで撮影が行われました。宮本敬文・撮影写真集「GIFT」との出逢いから、子供達の命の輝きを映像で撮った宮本敬文初監督の「涙〜世界のどこかで瞬間」のドキュメントPVはこうして誕生したのです。撮影を終えて帰国後、年末のあわただしい中、編集中の宮本敬文さんからお電話をいただきました。「近藤さん、僕はあまり自分を褒めることはないのですが、これは本当に自信作になりました。こんな撮影の機会をくださって本当にありがとうございました。」と。胸が熱くなるこの宮本さんのお電話は、「涙〜世界のどこかで瞬間」で愛と世界の平和への思いを出来得る限り多くの人々に伝えねばという思いをますます私に強くさせました。
21世紀になってもまだ、世界では戦いがあり、テロがあり、貧困があり、病気があり、飢餓がある。多くの子供達が涙をこぼしている現実があります。それでも人は瞬間(いま)を生き抜いて、明日の幸せを夢見て強く生きていってほしい。「涙〜世界のどこかで瞬間」で世界中の人々にその願いが届けられますように。
このストーリーの登場人物以外にも、この音楽に惚れ込んでドキュメントを創ってくれたKNBの上原君はじめこのライブを能登半島から発信しようと支えてくれている七尾の皆様他実に大勢の方々に支えられている60歳の私は幸せです。この幸せを少しでも誰かを幸せに出来るエネルギーに変えて生きていこうと誓う還暦の私です。

                                     音楽プロデューサー 近藤由紀子