石川県立七尾高校の卒業式にKennyが歌った「Carry On The Peace」

母校石川県立七尾高校卒業生とKenny

3月11日は11年前に亡くなった父の命日でした。父は所沢の陸軍航空学校で訓練を受けたパイロットでした。太平洋、東南アジアの戦いを潜り抜け、最後に沖縄に集結させられ特攻として出撃する間一髪のところで終戦を迎え、生きて故郷の能登半島に帰ってくることが出来たのです。この奇跡のお蔭で私のいのちは石川県七尾市で誕生したのです。途方もない多くの若いいのちが飛び立って帰らぬ中で、私はこの世にいのちを繋ぐことが出来たのです。このいのちへの思い、平和への思いが現在までの私の音楽活動の原点になっていることは間違いありません。
それ故か、私が関わる音楽はきまって生まれ故郷の空や海に響くことになる運命なのでしょうか。それとも亡き母が私にいつも言っていた「故郷を忘れたらだめやよ、時々は帰ってこなね。」というその言葉に引っ張られるのでしょうか、また今回も現在プロデュースしているKennyと共に七尾に帰ることとなりました。
母校である七尾高校の創立百六年の時に講演の依頼を受け、私の拙い話をさせていただいたそのステージでSoRiのヴォーカルとしてKennyが歌った時の1年生が卒業をするということをP.T.Aの方から伺い、その卒業生にKennyの歌のプレゼントをすることを思いついたのです。日本でのインディーズ活動を経て、2008年2月20日に「アナタニアイアタイ」でメジャーデビューを果たしたKennyとまさに時を同じくして新たな出発する偶然を何かの縁と感じ、P.T.Aの関係者にオファーさせていただきました。「それなら生徒には知らせずサプライズで歌っていただきましょう。」ということになり3月4日母校の七尾高校の卒業式に二人で参加することになりました。私にとっては41年ぶりの卒業式でした。卒業生の名前が一人一人呼ばれる中、ふと遠い記憶の中に眠っていた思い出が蘇り、恩師や友との別れに胸が熱くなりました。

Seoul生まれL.A.育ちのKennyをプロデュースすることは私にとって音楽を通しての平和活動という思いが根底にあるのです。民族の違う人をプロデュースすることは様々な壁や労苦がありますが、それを乗り越えられる力が音楽にはあると信じているから出来るのです。単純に韓流ブームだからねとよく言われることですが、私にはそのことは何の意味も持ちません。どこの国で生まれたか、どこの国で育ったかということは音楽性の中にこそ内在していたとしても、プロデュースするかどうかの問題ではないのです。出会いがあって、そのアーティストに魅せられれば、より多くの人々にその音楽を伝えたいという思いでプロデュースすることは私にとって自然なのです。

今回卒業式ということで、1曲をという依頼で歌った歌、デビューシングルの中に入っているカップリング曲「Carry On The Peace」は、イタリア系アメリカ人のJOEY CARBONEが作曲した楽曲で、大切な人の幸せのため、世界のため、平和のために皆で強い信念で生きていけば、美しい空になる日が必ず来るという強いメッセージのある歌詞が付けられています。そういう歌を卒業生に贈ることが出来たことは大きな喜びでした。また、この歌はJOEY CARBONE の友人でTOTOの元ヴォーカルのJOSPH WILLIAMS(『スターウォーズ』等の映画音楽作曲家で知られているジョン・ウイリアムズの息子)がバックコーラスに友情参加し、話題を呼んでいます。すごいことでしょう。7月に開催される富山県世界文化遺産合掌集落の地「五箇山音楽祭」のイメージソングにもなっているものです。

この光景を父に見せてやりたかった。悲惨な戦争の光景が目に焼きついている父に。父が見た若き特攻隊と同じぐらいの日本の若者を前にアメリカ人が作曲した歌をSoul出身のKennyが歌う、音楽でこころが繋がる平和の光景を。やはり音楽は平和の使者。「お父さん、私、現在(いま)いいライフワークに取り組んでいるでしょう。」
悲しいことに現実は世界のどこかでまだまだ涙がこぼれています。私はこれからも音楽で平和への思い、いのちの大切さを伝え続けていきたいと思います。

Kennyと私はあたたかな思い出をまたひとつ胸に刻んで帰京しました。故郷七尾の皆様ありがとうございました。


                                    
                                  音楽プロデュサー 近藤由紀子


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Kenny official site http://www.kenny-net.com